
媒体によって見る人は違います。当然ながら、商品により、誰に広告を見せたいのかで広告媒体はかわりますし、キャッチコピーなどのメッセージもデザインも変わります。
一方でターゲットとする人に届けるためには、そのメディアしかないという場合もあり、最適ではけど、最良ということで選択しなければいけないこともあります。
現在、折込チラシの反応が落ちていると言われています。新聞購読者の減少と、部数水増疑惑など、一部ではレガシーメディア(衰退メディア)と言われています。こうした指摘に関して、印刷業界では「紙メディアがなくなることはない」という向きもありますが、危機感は持つべきだと思います。
新聞がレガシーメディアにならない方法としては、良質な記事を配信し続けるということになります。「新聞の本質とは何か?」と考えた時、それは良質なニュースを届けるということで、新聞社の生命線は記者にあります。
この点は、同じくニュースを配信しているテレビと類似しているように思われがちですが、「ニュースの数」「特集記事の深み」に関しては新聞に部があると考えます。ですから、新聞という媒体がなくなることは考えにくいですが、デバイスの進化によって、紙に印刷をして配達員が届けるという形態でなくなる可能性は否定できません。
こうなれば折込チラシの印刷を生業としている印刷会社の仕事は激減します。ですから、勝ち残るための戦略を構築していく必要があります。デザイン会社も同様で、折込チラシという媒体の価値を高めていかない限り、危険水域を脱することはできません。
折込チラシのメディアとしての価値を高めるために、6つの基本についてお話しします。
折込チラシ作成の基本1:折込チラシを集客のメインとする業種を特定する
折込チラシの反応が落ちていると言われながらも、集客のメイン媒体として折込チラシを配布し続けている業種もあります。
毎週のごとく、折込チラシを配布している業種として、
・スーパーマーケット
・ファッション店
・ドラッグストア
・不動産
・リフォーム
・学習塾
などがあります。
こうした業種の共通点は、店舗を起点に商圏が決まっているということです。
インターネットのSEO対策(検索エンジン対策)により、「学習塾 ●●(地域)」での集客を目指しても、トップ表示をさせることはチラシ作成以上に労力と費用がかかります。
折込チラシを媒体として価値を持つものにするためには、「地域の人を店に誘導する」という目的を果たすことが大切になります。そのためには、商品と価格を掲載するだけでは不十分だということです。
例えば、ユニクロは毎週金曜日に折り込みを配布しています。商品自体の魅力が認知されていれば、折込チラシの作成は「今週はこの商品がお買い得」というレイアウトが勝負となります。
スーパーマーケットでも、商品と価格だけでなく、「提案型」のチラシをよく見かけます。
商品の差別化が難しい場合は、お客さんへの提案がチラシの役割です。
折込チラシの価値を高めるために、折込チラシを作成する印刷業や広告業は、「店舗に誘導する」ためのアイデアが必要です。
折込チラシ作成の基本2:折込チラシとポスティングチラシの特性を理解する
新聞購読者が減少しているので、ポスティングでチラシを配布する会社もあります。地域全体にチラシを届けるメディアとしてポスティングは有効です。
ただし、チラシは届ければいいというものでなく、どう届けるのかも大切です。
集合住宅などで、家に帰ってポストを開けると、チラシが入っている。その後、多くの人はどうするでしょうか?
ポストの下にゴミ箱があればそのまま捨ててしまいます。当たり前ですが、「届ける=見てもらえる」ではありません。
かつチラシの印象の違いにも目を向ける必要があります。
同じチラシが新聞に折り込まれている場合と、ポストに入っている場合、どう感じるでしょうか?
特に薄い紙のチラシの場合、ポスティングは商品やサービスの信頼性を損ねることがあります。一方で、折込チラシの単価が安く、ポスティングが高いという価格比較で折込チラシを選択するのも早計です。
チラシを作成するサービスは何なのか?
どんなチラシを作成するのか?
ここを考えることは大切です。新聞購読者だけでなく、誰でもお客さんになりうる業種で、商品の信頼性を損ねないデザインと印刷がなされたチラシであれば、ポスティングは有効です。
具体的には、宅配食品に関しては、ポスティングが有効だと言えます。
ただし、厚めの紙に、保存性の高い情報を、保存されうるデザインのチラシであることがポイントになります。
折込チラシ作成の基本3:折込チラシは、中高年向けの女性がメインターゲットであること
効果的に折込チラシをメディアとして活用するためには、ターゲットの選定が大切です。要は、誰が折り込みチラシを見ているのか?ということです。
新聞を購読している年齢層を見ると、40代以上、ほぼ60代以上のメディアだと言えそうです。
ご主人が会社に勤めている家庭の場合、家の中の風景を思い浮かべたいと思います。ご主人が朝ごはんを食べながら新聞を読みます。
折込チラシは、横に置いて、新聞を読み、会社に出かけていく。もしくは電車に乗って読むために持ち出す。となると、折込チラシを見るのは、奥さんになります。
実際のところ、折込チラシは主婦向けの案内が多く、男性に販売したい商品の場合は、新聞広告に掲載をされています。
現在、折込チラシは、50代以上の女性に向けた集客媒体として有効だと考えることができます。
予測するに、40代はネット(スマホ)でのリサーチを行っていますので、この記事では50代以上としていますが、今後スマホ活用の年齢が上がっていけば、折込チラシが有効な業種はされに絞られることが予想されます。一方で、ネットが能動的にリサーチするメディアであるに対して、チラシはリサーチしていない人に届けるメディアとして、最良である状態はしばらく続きそうです。
チラシ作成者としては、主婦層のマーケティングに知見を持っておく必要があります。
地域に縛られず、全国的に販売が可能な通信販売は、新聞広告を積極的に出しています。こうした状態を折込チラシに変えてもらうためには、折込の効果を高めて費用対効果を上げていくしかありません。
その上で、ネックになるのが折込料金です。チラシの印刷費に比較して高すぎるので、この点は各販売店に考慮していただきたく思います。というか、折込料金を下げないと、折込チラシ自体が少なくなっていきます。という警告も発しておきます。
折込チラシ作成の基本4:チラシのデザインはニュース性を意識する
折込チラシの反応を上げる方法として、チラシを作成するためにクリエイティブに力を入れている印刷会社、広告会社があります。この考え方は当然です。
・キャッチコピーの作り方
・デザイン作成方法に工夫を凝らす
ことは大切です。
しかし、忘れてはいけないのが、折込チラシのメディアとしての特性です。
折込チラシの特性とは、新聞に挟み込まれているということです。
新聞はニュースを伝えるものです。ニュースを知りたいと思って読む媒体に、一目で広告とわかる内容が挟み込まれていたら、脇によけて捨てられて終わりです。
新聞がニュースを伝えるものなので、折込チラシも同様です。広告とは言え、ニュース性が必要になります。
もともとチラシは、自社のニュースを伝えるものでした。
日本で一番古いと言われているチラシが、三越のチラシですが、書かれている内容は、「店前現金売り」や「現金掛値無し」「切り売り可」などということですが、当時の商法からしたら常識外れの提案なわけで、ニュース性の高さを感じます。
チラシ作成のクリエイティブを行う際は、「これはニュースだろうか?」と質問をすることがポイントです。
折込チラシ作成の基本5:商品のポジショニングを明確にする
前項でチラシ作成はニュースを伝えるものと言いましたが、大げさなことを考える必要はありません。
また、他社に勝たなければならないという話でもありません。確かに、折込チラシは商圏の顧客を店舗に誘導する目的であるので、ライバル社も折込チラシを入れます。
勝たなければならないという気持ちはわかりますが、ライバルばかり見ていたのでは、お客さんがそっちのけです。
商品のポジショニングを意識することが大切です。
日本は成熟社会と言われるように、趣味趣向が多様化しています。これまでのようにマスに広告をして多くの人に買っていただくという戦略は正しいとは言えません。
自分に合ったお客さんにニュースを届ける。この点において、重要なのがポジショニングです。ポジショニングとは、お客さんのイメージとも言えます。ライバルとの比較としては、他の会社とどう違うのか?、何をしようとしているのかを伝えればいいのです。
ポジショニングを明確にする質問をしてはこちらの記事「自社のポジショニングを明確にする7つの質問」で案内しています。
実は、セカンドベストという考え方があり、必ずしも1位でなくても、ニュース性を伝えることができます。
セカンドベストで有名なのは、
レンタカーのエイビスが、「Avis is only No.2 」(私たちは業界2位のレンタカー会社です)というキャッチコピーは自分たちから堂々と№2宣言したとして、売上を拡大させたという逸話があります。
折込チラシ作成の基本6:あれこれ言わない
新聞広告と折込チラシの違いは、ニュース性を伝えるものであっても、折込チラシは「記事」ではないということです。
広告らしくない広告は「記事広告」に譲るとして、折込チラシでは、ニュースを端的に伝えることがポイントになります。
広告作りに卓越した会社のチラシです。シンプルさが際立っています。
さらに、次の広告を見てください。こちらは新聞広告なので、スペースはチラシの1/6ですが、高いレスポンスを取っていると予想されます。要は、まわりくどいキャッチコピーよりも、ずばっとオファーを訴求することでもレスポンスが取れるということです。
あなたのチラシに反応がないとしたら、伝えたいことが多すぎて、言いすぎているために、お客さんに届いていないということもあります。
折込チラシの作成においては、チラシの紙面に情報を詰め込みすぎないことが大切です。
くどく説明をしないで、ニュースを伝える。これが優秀なクリエイティブとなります。
まとめ
折込チラシの印刷業がさらに成長をするためには、折込チラシの媒体価値を高めるということにつきます。
印刷コストを下げることは大切ですが、折込料金に予算の大半を使ってしまうようでは、会社に利益が残りません。
折込チラシのコストダウンに関する努力に加えて、折込チラシの媒体価値を高めるために、6つの基本を参考にしていただければ幸いです。