ザッポスと「地雷専門店」鶯谷デットボールに共通する11の差別化戦略

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中小企業には差別化戦略が欠かせません。どのようなポイントに絞って他社との差別化を行えばいいのか?経営者は日夜考え続けていることだと思います。

様々な差別化戦略の事例を調べては自社に当てはめようとしますが、どうもしっくりこない。結局のところ、誰が売っても売れるような画期的商品を開発しなければ差別化戦略は実行できないのか?

アイデアでの差別化戦略は理想的ですが、現実には先行者がいたり、開発にかかる費用を捻出することができず、差別化戦略に成功している企業は多くはありません。

そこで、この記事では、コンセプトと人材で差別化戦略に成功した企業の事例を基に、今ある資産で中小企業が差別化に成功するポイントについて考えます。

 

取り上げる事例は、アマゾンを震撼させたと言われるサービスを提供しているザッポスと、「レベルの低さ日本一」なのに常連客が続出と言われている鶯谷デットボールという対極にある2社から差別化戦略について考えます。

考察に関しては次の2冊の本を参考にしました。
ザッポスの奇跡(改訂版)~アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略~

なぜ「地雷専門店」は成功したのか? 業界未経験の経営者が超人気風俗店を作り上げるまで

 

 

ザッポスザッポスは熱狂的なファンがそのサービスを褒め称え、クチコミで次々と新規顧客を呼び込み成長を続けていると言われています。

 

 

 

一方、鶯谷デットボールのキャッチコピーは

 

デットボール地雷ガールの濃厚危険球!貴方のバットで見事★打ち返して下さい。

消える魔球~ピンボールまで、迷・珍選手たちの多種多様な艶熟ボールを体当たりで体感して下さい。風俗を止めたい方~各種宴会の罰ゲームまで、遊べば夫婦関係円満!彼女の有り難さ倍増!都内随一危険球専門店 デッドボールへようこそ!

 

というものでこちらもリピーターを獲得しています。

 

 

1:競争の厳しい業界で勝つためのコンセプトがある。

シューズの販売、風俗店という具合に両社とも競争の厳しい業界で差別化に成功しています。両者に共通する差別化戦略は、コンセプトです。

ザッポスは今では顧客サービスによって成功したと言われていますが、顧客を獲得しなければサービスのよさを実感していただくわけにはいきません。最初に差別化戦略があります。

もともとシューズのネット販売は不可能だと言われていました。試し履きをして購入するためネットでそのまま注文をするなど考えられないという話です。当然のことですね。

ところが、ザッポスは、返品は何度でもOKのサービスを提供することでこの問題をクリアしました。お店では商品を持ち帰ることができますが、ネットだと手元に届くまで時間がかかるというデメリットも翌日配送でクリアしました。要はネットによるデメリットをなくしたのです。

さらに、店舗で買うよりもネットで買うメリットがある点として、豊富な在庫(ネットだと商品点数に際限はありません、店舗だと在庫が限られます)、24時間のカスタマーサポート。さらに、購入しても1年以内なら返品ができるという点。こうして、ネットで買うデメリットを払しょくするだけでなく、大きなメリットに転嫁するという差別化戦略を実行しています。

 

鶯谷デットボールは、「風俗を止めたい方~各種宴会の罰ゲームまで、遊べば夫婦関係円満!彼女の有り難さ倍増!」という逆のコンセプトでスタートしている。通常、好みの女性がいて、料金もリーズナブルなお店を選ぶのだけど、他店で採用されなかった女性だけが在籍している(創業当時)ということでその手のニーズにリーチしました。しかし、最初からお客がいたわけでなく、風俗を性の発散からエンターテイメントに変えたことが成功要因だと言えます。

両社ともコンセプトで差別化を行っているのです。

2:驚きを届けている

ザッポスはシューズのネットショップではなく、「サービスカンパニー」だと称しています。「WOW(驚嘆)のサービス」というのは有名で数々のエピソードがあります。

ある女性が病床の母のために靴を購入します。しかし、母は間もなく他界してしまいます。その後、多忙な女性は靴の返品を忘れてしまいます。そんな時にザッポスから靴の具合を確かめるメールが届きます。女性は母が他界したこと、返品にしばらく時間がかかることを伝えます。するとザッポスから集配のサービスをうかがわせるという連絡がありました。返品の引き取りは、ザッポスのポリシーにはありません。スタッフの判断です。それだけでなく、翌日にはザッポスからお悔やみの花束が届きます。感激した女性はブログに書き、その話は多くに人にシェアされることになります。

 

 

鶯谷デットボールも、キャストのキャラクターで驚きを届けています。詳しくは、「なぜ、地雷専門店は成功したのか?」をお読みいただきたいのですが、総入れ歯、入れ墨、100キロ、母娘など、聞いたことのないようなキャラクターが登場します。

行ったことはありませんが、こうして事例に上げていること自体、人に話したくなりまるようなエピソードが満載です。営業成績が悪い社員の罰ゲームに利用されることもあるようで、当然ながら体験した人は「WOWのサービス」受けることになります。

両社ともWOWのサービスで差別化に成功しています。

3:スタッフがお客さまサービスを追求している

スタッフがお客様サービスを追求しているという点でも、両社に共通点があります。会社の姿勢として、顧客を喜ばせるための権限と責任を委譲しているということ。スタッフは委譲された権限に応えるべく質の高いサービスを提供します。

通常、オペレーターはクレームの電話には消極的で、会社に損を与えないように判断をします。ザッポスの場合、クレーム対応の指導を行っていないようです。自主性に任せていて、例えばスタッフから「30ドルのクーポンをお渡しすれば」というような提案も許可されるようです。

鶯谷デットボールは、キャストが服の上からプロテクターを付けて「脱がせてください」というようなエピソードが紹介されていますが、「仕事」をするだけならプロテクターは必要ありません。是非はともかく、これもサービスの追求と言えます。それにしても野球のプロテクターを持った大柄の女性と鶯谷の駅で待ち合わせる姿は周囲の注目の的になると想像できますね。

サービスレベルにおいても差別化に成功しています。

 

 

4:電話を武器にしている

両社は電話を武器にしている点でも差別化に成功していると言えます。

ザッポスの武器はCLT(カスタマーロイヤリティチーム)と呼ばれるコレクトセンターです。通常のネットショップが電話オペレーションを避けているのと対照的にザッポスでは24時間対応を行っています。

お客さんの問合せに対応して2時間費やして、買い物はしてもらえなかったけど、感謝されましたというCLTメンバーはよい仕事をしたと評価されます。

 

鶯谷デットボールの差別化戦略の武器は総監督の電話トーク。

お客さんと次のようなやり取りがあるようです。

「店長だったらどの娘を選ぶ?」

「誰も嫌です。」

「若い娘はいる?」

「若作りの娘ならいます。」

という内容でお客さんが来るかどうかはわかりませんが、楽しめることは間違いありません。

 

 

5:社員の個性と強みを活かしている

社員の個性で差別化をするためには、マニュアルをなくしてしまう必要がります。ザッポスのCLTにはマニュアルがないようです。お客様からの問い合わせに対する対応は個々の社員に任されています。しかし、全く任せっぱなしではなく、クオリティ保障チームがあります。ただし、このチームの仕事は仕事に処理時間や正確さではなく、「顧客をどれだけ喜ばせたのか?」というアドバイスを行うような成長の仕組みがあるようです。

 

鶯谷デットボールの総監督の次の言葉から個性を重視していることがうかがえます。

「癒されない美人より、癒してくれるブスのよさを伝えることで、店全体をアップしていく。顔はブスだけどよく頑張っていることを知ってもらう。以前は単に顔がブスの段階で止まっていたけど、ブスの中身にまで関心を持たせていく。それが生命線になり、各種フェチの獲得にもつながるわけです。」

社員の強みを活かすというのは言葉では簡単ですが、マニュアルを廃止するという勇気が必要になります。

 

 

6:三方よしの経営である

商売の原則は三方よしだと言われます。

社員、お客さん、社会を幸せにする経営は、マーケットに好意的に受け取られます。

ザッポスは社員の幸せを追求し、結果、お客さんをハッピーにする提案が生まれ続け、生まれたエピソードは社会に広がります。

 

鶯谷デットボールに採用条件は、「身分証あれば即採用!他店で不採用が採用基準」「身分証があれば18歳から100歳まで即採用」とあります。賛否はあるかもしれませんが、他店を不採用になった女性は面接に行くことに恐怖を覚えるのではないかと思います。そうした女性を受け入れること、お客さんを集めることができること、ユーモアで社会に受け入れられることという三方よしの原則を差別化に活かすことができていると思います。

 

 

7:コアバリューがある

個性を重視すると言っても、それぞれの社員が勝手気ままに仕事をするわけには行きません。会社の方向性に合わせることが大切です。実際、ザッポスは企業カルチャーにあった人を採用しているし、鶯谷デットボールもすべてのスタッフが定着するわけではないようです。

両社にはマニュアルがないようですが、コアバリューがあります。コアバリューとは行動指針と言えます。

 

ザッポスのコアバリューは、

 

1.サービスを通じて,WOW(驚嘆)を届けよう。

2.変化を受け入れ,その原動力となろう。

3.楽しさと,ちょっと変わったことをクリエイトしよう。

4.間違いを恐れず,創造的で,オープン・マインドでいこう。

5.成長と学びを追求しよう。

6.コミュニケーションを通じて,オープンで正直な人間関係を構築しよう。

7.チーム・家族精神を育てよう。

8.限りあるところから,より大きな成果を生み出そう。

9.情熱と強い意思を持とう。

10.謙虚でいよう。

 

鶯谷デットボールのコアバリューは総監督が大切にしている宝塚歌劇団に伝わるブスの25箇条というものがあります。

 

1. 笑顔がない
2. お礼を言わない
3. おいしいと言わない
4. 精気がない
5. 自信がない
6. グチをこぼす
7. 希望や信念がない
8. いつも周囲が悪いと思っている
9. 自分がブスであることを知らない
10. 声が小さくいじけている
11. 何でもないことにキズつく
12. 他人にシットする
13. 目が輝いていない
14. いつも口がへの字の形をしている
15. 責任転嫁がうまい
16. 他人をうらむ
17. 悲観的に物事を考える
18. 問題意識を持っていない
19. 他人につくさない
20. 他人を信じない
21. 人生においても仕事においても意欲がない
22. 謙虚さがなくゴウマンである
23. 人のアドバイスや忠告を受け入れない
24. 自分が最も正しいと信じている
25. 存在自体が周囲を暗くする

 

両社とも差別化のための行動指針を持っているのです。

 

 

8:利益は後からついてくる

鶯谷デットボールは開店以来、赤字続きだったようです。業績が上向いたのはマスコミの取材が入ったからだと言われています。しかし、マスコミの取材も偶然ではなく、総監督のFAX攻撃がヒットしたものです。

その間にコンセプトを変えず、キャストを受け入れ続けています。もちろん、お客がいないので報酬は出せませんが、自腹を切ってごちそうするなどしていたそうです。

ザッポスに関しては、業績推移は下記のようになります。利益ではなく、顧客満足を追求した姿勢がわかります。

zappos1_2参考サイト

 

 

9:お客さんとのつながり

両社とも莫大な広告費をかけて集客しているわけではありません。成長のポイントは口コミです。

口コミをしたくなるような体験を提供することで、差別化に成功しています。共通するのは「忘れがたい経験」です。

 

ザッポスのCEOであるトニー・シエイの言葉に

「お客さんは何をしてくれたのかは覚えていないかもしれない。しかし、どんな気持ちにさせてくれたのかは決して忘れない」

というものがあります。

鶯谷デットボールに関しては、何をしてくれたのかも鮮明に覚えている可能性が高いですが。

 

 

10:社員教育に投資する

両社は社員教育という点でも差別化を行っています。

ザッポスには「ザッポスライブラリー」という図書館があり、そこでは経営陣がすすめる優良図書が置かれています。社員は自由に持ち帰ることもできるそうです(返却の義務がない)他にもスキルセットやパイプラインと呼ばれるキャリアアップのサポートも充実しています。

 

鶯谷デットボールでは、売れないキャストのために専属ヘアメイクと契約したり、法律の専門家と組んで無料相談を実施しています。詳しくは、総監督のブログをご覧ください。

 

 

11:強いリーダーシップがある

以上、10個の差別化戦略についてお話をしてきました。最後、企業の差別化戦略において最も大切なことは、リーダーに強いリーダーシップです。

自ら率先して企業のあり方を伝える伝道師となり、個性を活かすために権限移譲をする。さらに、社員が個性を活かすことができる環境を作る。

企業が成長するためのカルチャーの定着にはリーダーのぶれない姿勢が必要となります。

 

 

 

まとめ

以上、ザッポスと鶯谷デットボールとの共通する差別化戦略を勝手に考察しました。

ザッポスと鶯谷デットボールの差別化戦略の共通点は、「幸せをデリバリー」しているという点ではないでしょうか。

ザッポスはシューズ、鶯谷デットボールは個性的なキャストをデリバリーしています。そして、「WOWのサービス」により、競争の厳しい業界で勝ち抜いているのです。

 

補足:

鶯谷デットボールに関しては、2014年に発行された「なぜ地雷専門店は成功したのか?」を参考に考察しているため、今後の展開を見守りたいと思います。成功し、組織が大きくなるとマネジメントの課題も生まれます。現在の成功が未来も継続するかどうかはわかりません。だからこそ、これからもお客さんに「WOWのサービス」を提供してほしいと思います。

 

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この記事の執筆者

別所諒
・社長の味方コンサルタント
・株式会社経営戦略パートナーズ代表取締役
・心理カウンセラー

著書
「普通のサラリーマンが年収1000万円になる方法」

「がんばっても成果は出ない」

中小企業の2代目社長のサポーターとして、経営、マーケティング、組織開発の相談に乗っている。

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