
印刷物を発注する時、どの紙を選べばいいのか?
選ぶ紙の種類によって印刷物の仕上がりは違います。
光沢度合い、質感、厚みなど、どのような基準で印刷用紙を選べばいいのか。
「これまでと同じ紙」という発想は、チラシの効果を下げているかもしれません。
特にチラシの場合、レスポンスに影響することもあります。
この記事では、コート紙、マット紙、上質紙の解説とチラシの最適な紙の選び方について考えます。
同じ種類の紙でも質感と値段が違う
印刷の用紙を選ぶ際、最初に知っておくことは、用紙には複数のメーカーがあるということです。
ひと口に、コート紙、マット紙、上質紙と言っても、メーカーにより銘柄が違います。
例えば、王子製紙のコート紙の場合はOKトップコート、日本製紙の場合はオーロラコートという銘柄があります。印刷会社により仕入れのルートが違いますので、若干品質に差が出ることがあります。また、海外からの輸入紙にもコート系、マット系、上質系があり、さらに品質に違いがあります。
紙はどのように作られるのか?
最初の工程は、紙の原料となるパルプの製造です。パルプは木材チップや格子を溶かしたものから繊維を取り出して、製造しています。近年、環境保護の観点から、古紙から製造されるパルプもあり、再生紙が使われることが増えています。
また、適切に管理された森から生産された木材で作られていることを示すマークもあり、種類と同様に生産工程、原材料の供給方法にも注目が集まっています。それぞれの用紙には、マークが付与されており、企業のブランディングにも用いられています。
コート紙、マット紙、上質紙とは?
コート紙、マット紙、上質紙の違いについて説明します。
基本となるのは上質紙です。上質紙はコピー用紙や模造紙を思い浮かべていただくとわかりやすいと思います。一般的によく手にする紙ですが、印刷の場合、モノクロ印刷に使われることが多く、カラーの場合は使用頻度が少ないと言えます。
コート紙は上質紙の表面に薬品を塗布しコーティングした用紙です。塗布された面は少し光沢が出ます。表面の光沢がさらに強い紙をアート紙と言いますが、効果になるため、高級なパンフレットなど以外にはコート紙が使われることが多いと言えます。
コート紙は、カラー写真などを印刷した場合の見映えが良く、パンフレット・リーフレット・ポスター・チラシ等でよく使われます。
マットコート紙も上質紙の表面にコーティングをしたものですが、表面の光沢を若干抑えて、しっとりとした質感と手触り感のある紙です。光沢を抑えて、シックな印刷にしたい場合に用いられます。同じ厚みでも手で触った感じは、マット紙が厚く感じられます。
好みによりますが、マット紙に印刷する方が上品に見えるという意見もあります。
コート紙もマット紙も表面にコーティングがされているため、ハガキやアンケートなどのようにペンを使う場合は不向きです。どちらかと言えば、マット紙の方が書きやすいと言えます。
紙の厚さはどのように計算する?
紙の厚さは、斤量と呼ばれます。斤量は用紙の厚さを示す単位で、原紙1,000枚を重ねた時の重さ(kg)で表します。
例えば、コート紙<110>は原紙を1,000枚重ねたら110キロになるという意味です。コート紙<90>よりもコート紙<110>の方が重いので、紙も厚いということになります。
紙のサイズは、4/6版、菊判を基本とします。B版には4/6版が使われ、A版には菊版が用いられます。それぞれサイズは違いますので、斤量の表記の仕方も変わります。
4/6版のサイズは、B4サイズを8枚印刷することができます。
Bサイズの印刷物の印刷物に使われます。代表的な印刷物は折込チラシになります。
菊判のサイズはA4が8枚印刷できます。よくパンフレットなどに使われます。
4/6版は菊判よりも大きいので、斤量も大きくなります。ただし、4/6版でコート<110>は菊判ではコート<76.5>となり、両者は同じ厚みの紙です。
このように、紙に無駄がないように、印刷サイズに合わせた原紙が用意されているのです。
用紙の費用は?
紙の価格は、種類と重さによって決まります。まず、用紙によって基本単価が決まっています。基本単価とは、用紙1キロあたりの金額です。
価格はメーカーや会社によってバラツキがあります。
例えば、1キロ@90の紙を4/6版<90>で1000枚使うとすると、90円✖️90キロで8100円となります。B4サイズだと用紙1枚に8つのチラシを印刷できるので、チラシの枚数は8,000枚となります。
※ただし、実際の印刷は色を合わせるための紙を必要としますので、1,000枚以上の紙が必要になります。
110キロの紙の場合、値段は9900円となります。
110キロの紙と90キロの紙の価格差は、1.22倍ですから、重くなる分の価格が上がると考えて差し支えありません。
コート紙、マット紙、上質紙の価格は?
基本的な価格感度は、
上質<コート紙<マット紙
の順になります。
しかし、印刷会社の仕入れにより、コート紙とマット紙が同じ価格の場合もあります。輸入紙の場合は、さらに価格が下がることもあります。しかし、国産の用紙を質感が違うので、事前に用紙の確認をしておく方が無難です。
どのような業種で使われているか
ほとんどのチラシにはコート紙が使われています。特に写真を美しく見せたい場合はコート紙が適しています。しかし、チラシの厚みや質感を重視したい場合は、マット紙を使うことがあります。
通信販売の場合
コート紙で印刷されたチラシ
マット紙で印刷されたチラシ
学習塾の場合
コート紙で印刷されたチラシ
マット紙で印刷されたチラシ
クリエイティブと用紙を連携させる
実際に印刷される用紙によって、印刷物の質感は全く違います。
チラシの場合、厚い紙の方が手に残りやすいので、複数枚の中でも手に取られやすくなります。
質感に関しては、若干、主観が入っているかもしれませんが、
高級感を演出したい場合→コート紙
特別感・上品さを演出したい場合→マット紙
安さを演出したい場合→上質紙
が選択の基準となると思います。
他に、記事風のチラシ、激安を訴求したい場合、更紙という用紙があります。
更紙に関してはこちらの記事を参考にしてください。
「印刷会社が嫌がる更紙を上手に活用する方法」
紙の値段を下げる裏技
単価が下がり、紙厚を保つことができる嵩高紙という用紙があります。
繊維が長く、斤量が軽いのに手で触ったら厚く感じる紙があります。出版でページ数が少ない本を厚くするための紙です。
最近では、一般にも流通しているので、チラシにも使うことができます。印刷会社に問い合わせれば、手に入りますが、価格が下がるので嫌がるかもしれません。逆に嵩高紙の仕入れを得意としている印刷会社の場合、コストを下げることができます。
まとめ
この記事では、チラシの印刷は、コート紙、マット紙、上質紙はどう選べばいいのかを考えてきました。用紙によって、チラシの印象は変わります。用紙の特性を理解して、印刷をすることをおすすめします。
また、チラシを複数回の印刷をする場合は、用紙を変えてテストをしてみることも有効です。